コロナの影響や事業環境の変化を受けて、新たな事業展開に取り組む企業が増えています。私が行った支援にも、自動車や工作機械向けの部品加工を行っている製造業が、BtoCの事業への展開を考え新製品開発に取組んだ企業があります。それらの支援を通して、中小企業の新分野展開について、感じることを述べたいと思います。
中小製造業の中には下請けという立場から脱却し、消費者などの最終ユーザーへ直接製品を販売することで事業の成長に活路を見出そうと考える経営者は多いと思います。
製造業がBtoCの新規事業展開を行う上でクリアしなければならない重要な課題がいくつかあると考えています。
1つは、消費者に受け入れられる商品価値のあるモノが作れるかということです。BtoBの事業では顧客企業の要求に沿った品質や納期で製品供給を行いますが、消費者などの最終ユーザーに自社が直接販売する場合は、自社で品質の基準を決めなければなりません。市場ニーズを満たす品質を見極め、それを満たす必要があります。品質の見極めを誤ればモノは売れません。
次に、販売チャネルの確保が必要となります。仮に商品価値のあるモノがつくれたとしてもそれを消費者に届ける販売手段がなければ消費者に商品は届けられません。製品開発に取組む前の企画段階で、参入市場の流通についての調査と、流通事業者へのアプローチが重要となります。流通事業者と関係ができ販売チャネルの見込みがつけば、そこからのフィードバックにより市場が求める商品開発も行いやすくなります。
最後に事業として収益を上げるための収益計画が重要となります。製造業はモノづくりのプロですので新製品開発において製造技術課題に目が行きがちですが、モノが出来ても利益が上げられなければ事業としては成功したとは言えません。計画した原価と販売価格で計画した販売数量を確保できてようやく事業として成り立ちます。
新分野展開には従来事業にはない課題が多く出てくるため、経営者やそれに関わる人たちの熱意が欠かせません。新分野展開に取り組む企業には、熱意と戦略を持って、成長に向けた取り組みを進めて行ってもらいたいと思います。